煙の向こうに声が聞こえる

作品名・サービス名 煙の向こうに声が聞こえる
著者 岸本七子
概要 湯河原で便利屋を営む愛煙家の青年・門野充。
街の人たちの生活に寄り添い気ままに生きる彼には、
誰にも言わない、ある些細な「秘密」があった――。
漫画誌『青騎士』気鋭の作家・岸本七子、初連載作!
燻らす紫煙を通し人の心の機微を描く、煙る人情ドラマ。
公式無料提供先 カドコミ
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レビュー
1

  • 日常の隙間に忍び寄るミステリアスな要素が魅力

    タイトルからして、煙のようにぼんやりとした世界の向こう側に、何か不思議なものが潜んでいる予感がして、すぐに第1話を読み始めました。作者の独特なタッチが光るこの作品は、日常の隙間に忍び寄るミステリアスな要素が魅力で、読み終えたあと、胸にじんわりとした余韻が残りました。物語は、煙の立ち込める街を舞台に、主人公の少女が不思議な声に導かれるところから始まります。彼女は、煙の向こうから聞こえるかすかな囁きに戸惑いながらも、好奇心からその源を探ります。キーとなるキャラクターは、この少女と、煙のように曖昧な輪郭を持つ謎の存在。初回エピソードでは、少女の孤独な日常が丁寧に描かれ、煙がただの霧ではなく、心の闇や失われた記憶を象徴しているような雰囲気が漂います。突然の声の出現が引き起こす小さな事件—それは、忘れられた手紙や、街角の古いラジオから流れるノイズ—が、徐々に大きな謎へとつながっていく展開が秀逸です。サスペンスフルでありながら、どこか詩的なタッチで進むので、ホラーというよりは、心の奥底を優しく撫でられるような感覚でした。アートスタイルは、柔らかな線と淡い色調が特徴で、煙の表現が特に印象的。ページをめくるたびに、霧がかかったような視覚効果が、物語の没入感を高めています。背景の細やかなディテール—例えば、雨に濡れた路地や、ぼやけた街灯の光—が、少女の内面的な揺らぎを視覚的に補完していて、読んでいて心地よいです。テーマとしては、孤独とつながりの狭間、または現実と幻の境界線が浮かび上がり、現代の私たちに響くものがあります。煙の向こうに「声」が聞こえるというモチーフは、SNS時代の孤立感を思わせ、単なるファンタジーではなく、深いメッセージを秘めていると感じました。全体として、第1話だけでも引き込まれる力強さがありましたが、続きが気になって仕方ありません。短編的なエピソードの積み重ねで、徐々に全体像が見えてくるスタイルなのかもしれません。忙しい日常の中で、こんな風に心を揺さぶられる作品に出会えるのは嬉しい限りです。煙のように儚いのに、声のように鮮明に残る物語。

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    • tadasuki
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